氷解

日々の思考を垂れ流すゴミ箱

ハゼ馳せる果てるまで/ずっと真夜中でいいのに。【楽曲考察】

どうもヒグラシです。

私はずとまよの曲が大好きで、一番好きな曲はどれかと聞かれるとなかなか返答に窮するのですが、今回は最近自分の中で再燃している『ハゼ馳せる果てるまで』について自分なりの解釈を書きなぐってみようと思い、ひさびさに筆を執りました。

考えれば考えるほど深くて切なくて、本当に大好きな曲です。

 

『ハゼ馳せる果てるまで』


曖昧な解決 どう踠いても
単純問題解答ならば
表 裏 使い切って
遠ざかる練習 繰り返すの

会いたいは有限 壊さないように
確かめてしまう癖を
嫌がらないで もう助けてよ
また スパイラルに絡まる

もう 君どころじゃないよ
春も消毒も 終わらせたいから
人口知能 使って 引き止めたりしないで
簡単に正解 ばら撒かないでいてね

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ それで消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ
綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 忘れてしまうのに。。

君の欠点ばかり漁って
孤立無援の罠を潜って
深い曹操に自ら溺れて
涼しい顔で笑って
そっと涙を零すのなんで
渡りたくないのにどうして

ずるいよ ずるいよ
痛い痛いの飛んで行けって
もういいよ もういいよ
君の意味になれないなら
上昇気流 奪って 引き止めたりしないで
簡単に可能性 与えないでいてね

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ それで消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ
綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 忘れてしまうのに

何が抗うの 何を憎めるの
預けないでいてよ

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ 指で消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ
綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 逃れてしまうのに

当てはまってても 抗っていたいよ
今宵も水に 溶けてお休み
罰があってても 振り向かないよ
単純に慎重に 泳いでいたいの
当てはまってても 争っていたいよ
今宵も水に 溶けておやすみ
泥まみれでも 信じさせてよ
異なる自分を愛していたいの

(公式YoutubeチャンネルのACAねさんのコメントより引用)

https://www.youtube.com/watch?v=ElnxZtiBDvs

 

【PVについて】

今回の舞台は宇宙です。主人公の子の雰囲気やイントロの感じも相まってマクロスFを彷彿とさせます(マクロスFを見たことはない)。

ニラちゃん

ストライプ師匠/エグン(頭巾をかぶった男)

うにぐりくん

 

それでは早速、頭から歌詞を見ていきましょう。

◎イントロ

曖昧な解決 どう踠いても
単純問題解答ならば
表 裏 使い切って
遠ざかる練習 繰り返すの

 

冒頭から、この曲の本質的なテーマを表しています。「曖昧な解決」とは、自分と彼が別れる未来がそう遠くないことに薄々気づいていながら、ずるずると今の関係を続けていくことを指しているのだと思います。

この曲のテーマについてですが、私は主人公の女の子が彼との遠距離恋愛を終わらせたいと悩んでいる歌だと思っています。ずとまよで宇宙と言えばサターンが出てくる方も多いと思いますが、この曲のMVにも多くの点でサターンを彷彿とさせるシーンがあります。サターンは自分と彼を地球と土星に例えた遠距離恋愛の曲であると解釈している方が多いのかなと思いますが、私はこの曲がサターンの続きを歌った曲だと考えています。

好きなのに遠距離のためなかなか会えない彼との関係を続けることが辛い、でもこのままの関係をずっと続けていくのが本当に幸せなのだろうか、という悩みを歌った曲なのだと思います。

「どう踠いても 単純問題解答ならば」は、このままどう抗っても単純な問題と解答でしかないことは明らかだということ。つまり「どうしたら今の彼とのあいまいな関係を変えることができるのか」という問いと、「自分が彼のことをあきらめて別れを切り出すしかない」という解答です。

「表 裏 使い切って 遠ざかる練習 繰り返すの」は、彼への未練を断ち切るために、できる限りの表(建前)と裏(本音)を使いこなして、彼との距離を徐々に広げていこうと日々を過ごしているのだと思います。

 

◎1番Aメロ

会いたいは有限 壊さないように
確かめてしまう癖を
嫌がらないで もう助けてよ
また スパイラルに絡まる

 

「会いたいは有限 壊さないように」は、本当は会いたい気持ちが毎日止まらないけれど、それを素直に伝えれば彼に面倒な女だと思われ、関係が壊れてしまうことが目に見えているから、ここぞというときにしか使えない=「有限」ということ。

「確かめてしまう癖を 嫌がらないで もう助けてよ また スパイラルに絡まる」は、彼の気持ちが離れて行ってしまわないか不安で、つい言葉や行動でそれを確かめてしまうけれど、それで彼に嫌がられるのは避けたい、という相反する感情がずっと自分の中でぐるぐると駆け巡っている。

 

◎1番Bメロ

もう 君どころじゃないよ
春も消毒も 終わらせたいから
人口知能 使って 引き止めたりしないで
簡単に正解 ばら撒かないでいてね

 

「もう 君どころじゃないよ」。私はここが実にACAねさんらしくて深い歌詞だなと思うのです。放っておくと、つい君のことばかり考えてしまう、だから君のことを考えないようにするために必死で、君のことなんて考えている暇がないよ、ということなのかなと思いました。

「春も消毒を終わらせたいから」は、春=彼との青春、消毒=彼への気持ち(毒)を消し去ること、と捉えました。彼との付き合いをやめて、彼への気持ちを早く断ち切ってしまいたいという苦悩です。

「人口知能 使って 引き止めたりしないで 簡単に正解 ばら撒かないでいてね」は、まるで人工知能で分析したかのように、自分が求めていた言葉(彼が自分を愛してくれていると思わせる言葉=正解)を簡単に口にしないでくれ、彼への気持ちを諦められなくなるからという意味です。彼は自分の扱いがよく分かっている、だからこそずるずると諦められずに付き合い続けてしまっている。口から的確なセリフが出てくることを「人口知能」と書く工夫がACAね節ですね。

 

◎1サビ

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ それで消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ
綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 忘れてしまうのに。。

 

「泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か 覚えた息継ぎをして」。サビのメロディや歌詞はこの曲でも特に大好きなの所なのですが、解釈しようとするとなかなか難解です。

おそらく「泳ぐ」は彼との関係を長続きさせようとすること、「溺れる」は彼との関係を断ち切ってしまうことだと思います。彼とのこんな曖昧な関係を長続きさせる必要はないと本音では分かっているし、彼に依存している弱み(傷)があるわけでもないのに、いつの間にかだらだらと関係を続けていくための小手先のふるまい(息継ぎ)をすることは覚えてしまった。

「先に溺れるよ それで消し切れるなら どこまでも ただ 遠くへ」。だから自分から先に溺れる(彼と別れる)ことを選ぶよ、それでこの苦しい思いを消し切れるのならば、泳ぐことをやめて、ここではない遠くへ行きたいと思うよ。

「綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま」。綺麗にこの関係を終わらせるために、建前の言葉を伝えようと思うよ、彼との思い出の価値を損なわないようにしたまま。

「おいでって おいでって おいでって なんで 明日にはもう 忘れてしまうのに。。」。自分は覚悟したのに、彼は今日も優しく「おいで」と声を掛けてくる。なぜ忘れさせてくれないのだろうか。どうせあなたは、明日にはもう私との夜なんて忘れてしまうのに。。

 

切ない歌詞ですね。この世界観と奥深さが本当に好きです。「忘れてしまうのに。。」と句点を2個並べて三点リーダーよりもライトな余韻、物悲しさを表しているところも好きです。MVでここのニラちゃんがすごく悲しそうな顔をしながら水に飛び込むシーンも印象的でした。

 

◎2番Aメロ

君の欠点ばかり漁って
孤立無援の罠を潜って
深い曹操に自ら溺れて
涼しい顔で笑って
そっと涙を零すのなんで
渡りたくないのにどうして

 

「君の欠点ばかり漁って」は君のことを嫌いになろうと、欠点を探そうとしている。

「孤立無援の罠を潜って」は彼と別れて一人になってしまう未来の自分に対する不安を乗り越えようとしている。

「深い曹操に自ら溺れて」、まるで三国志曹操のように知略を巡らせ理屈で気持ちに整理を付けようとしている。

「涼しい顔で笑って そっと涙を零すのなんで」、私が気持ちを伝えても君は怒ったりせず、涼しい顔で笑っていたのに、と思えば涙をこぼして悲しんでいる。もう私には君の本当の気持ちが分からない。

「渡りたくないのにどうして」、このまま君という名の海を泳いで渡り切ることはやめようと決めていたのに、どうしてそんな顔をするのだろう。

 

こんな感じでしょうか。ここも解釈が難しいですね。個人的には不完全だと思っているので、また自分の中で腑に落ちる解釈が思いついたら追記します。

「漁って」「潜って」「溺れて」「涼しい」「零す」と、ワンフレーズごとに水に関係ある言葉でまとめているのがおしゃれです。

いきなり三国志曹操が出てきたところもおそらく言葉遊びなのだと思いますが、そこまでは分かりませんでした。「想像」と「曹操」を掛けているのかな?

 

◎2番Bメロ

ずるいよ ずるいよ
痛い痛いの飛んで行けって
もういいよ もういいよ
君の意味になれないなら
上昇気流 奪って 引き止めたりしないで
簡単に可能性 与えないでいてね

 

「ずるいよ ずるいよ 痛い痛いの飛んで行けって」は、私の心の痛みを癒してくれるおまじないのような、君の言葉がずるいという意味。そんなのはまやかしで、本当は痛みが消えることはないのに。

「もういいよ もういいよ 君の意味になれないなら」は、君にとっての大切な人、つまり君の人生の意味になれないのであれば、もうこの関係は終わらせてしまっていいよ、と吹っ切れている様子です。

「上昇気流 奪って 引き止めたりしないで 簡単に可能性 与えないでいてね」。上昇気流とは、彼への思いを吹っ切って離れさせてくれる気持ちのこと。それを奪って自分のことを引き止めないで欲しい、まるであなたとの関係が続くような期待を持たせる言葉を簡単に与えてこないで欲しいという意味。

これはこれでしっくりくるのですが、サビで彼への思いを断ち切ることを「溺れる」と表現したのに対し、ここでは空に飛び立つことという様子で表現しているのが少し考察不足かもと感じてます。もし「溺れる」が彼との曖昧な関係に甘んじる決心をするという意味なのだとしたら、溺れて沈んでいく様子と飛び立つ様子が綺麗に対比になるのですが、サビの歌詞の雰囲気からしてそれだと説明が上手く出来ない気もしています。

 

◎2サビ

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ それで消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ
綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 忘れてしまうのに

 

基本的には1サビと同じですね。唯一違うのは、最後の「明日にはもう 忘れてしまうのに」に句点が付いていない部分です。1サビのところではまだ彼の言葉に戸惑っている様子があったのに対し、ここでは彼の言葉を振り切って前に進もうという気持ちが勝ってきているのかなと思いました。

◎Cメロ

何が抗うの 何を憎めるの
預けないでいてよ

 

「何が抗うの」は、彼への気持ちが断ち切れない理由はどこにあるのだろうという意味。

「何を憎めるの」は、彼への気持ちを断ち切ろうとする理由はどこにあるのだろうという意味。

「預けないでいてよ」は、この関係の行く末を私に決めさせないでよ、という意味だと思いました。主語がないのでここは解釈が難しいですね。

 

◎落ちサビ

泳ぐ必要も 傷も無いのに何故か
覚えた息継ぎをして
先に溺れるよ 指で消し切れるなら
どこまでも ただ 遠くへ

 

1サビ、2サビでは「それで消し切れるなら」だったのが、「指で消し切れるなら」になっています。指で彼との関係を消し切る=彼の連絡先や、彼とのLINEのトーク履歴などを消し去って、それでこの気持ちが断ち切れるのであれば、思い切って進もうということだと思います。

 

◎ラスサビ

綺麗事 言うよ 価値を値付けたまま
おいでって おいでって おいでって なんで
明日にはもう 逃れてしまうのに

 

ここも1サビ、2サビと基本的には同じ。「明日にはもう 忘れてしまうのに」が彼のことを表していたのに対し、「明日にはもう 逃れてしまうのに」は、自分のことを表しているんだと思います。明日にはもうこの関係を終わらせると決心しているのに、なぜ彼は最後まで嫌いにさせてくれないのだろう、ということですね。

 

◎アウトロ

当てはまってても 抗っていたいよ
今宵も水に 溶けてお休み
罰があってても 振り向かないよ
単純に慎重に 泳いでいたいの
当てはまってても 争っていたいよ
今宵も水に 溶けておやすみ
泥まみれでも 信じさせてよ
異なる自分を愛していたいの

 

彼との関係を続ける方が心地いいのだとしても、その現状に抗っていたいと思う。抗い疲れたら今日も一旦休もう。この自分の選択が咎められるべきものだったとしても、自分はもう振り向かないよ。ただ流されるように漫然と付き合うのではなく、慎重に自分の気持ちを確かめながら付き合っていきたいだけだから。もし彼との関係を続けていた方が良かったと悔いることがあっても自分の気持ちと戦っていきたいと思う。戦い疲れたら、一旦休めばいい。ハゼのように泥まみれになりながら進む自分だけど、この選択が間違いではなかったと信じさせてほしい。今までと違う、一歩前に進んだ自分のことを愛していたいと思うよ、というアウトロです。

 

泥臭いけれど前向きで、勇気をもらえる曲だと思います。

 

こういうのって、正解があるわけじゃないので、みなさんも何か自分なりの解釈を見つけられたら何気ない曲も味わい深いものになるのではないでしょうか。他の人の解釈を見ると、自分の気づかなかった側面から曲を見ることができるので、そういうのは素敵だなと思います。

 

それでは。

 

※PVに関する考察は、また追記予定。たくさん書きたいことがあるので。